かっこいいスノーボード写真ってなに?ーCool Snow Photographyー

かっこいいスノーボード写真ってなに?ーCool Snow Photographyー

使用目的や撮る人によって同じ被写体でも様々な写真になる。見る人、場所によって写真の評価は様々なものになる。そのためどんな写真でも一概に「かっこいい」とか「ダメな写真」とは言い切れない。

ここではプレイヤーであるスノーボーダーやスキーヤーが見て「かっこいい!」と思うような写真を「かっこいいスノーボードの写真」と定義する。それは他の写真とどう違うかのか説明しながら、基本的な撮り方や考え方も紹介します。

スノーボード写真の約束

新聞や一般スポーツ誌に掲載される写真と、プレイヤーたちが見ているスノーボード・スキー専門誌の写真ではかなりの違いがある。それはカメラマンの技術や感性ではなく、必要とされている写真に違いがあるからだ。

詳細な状況説明 -1カットですべてを説明する-

もっとも大きな違いはこの部分だろう。新聞などではライダーだけしか写っていない、すごく寄った写真(スノーボーダーがアップで写された写真)が使われている。一方スノー専門誌に掲載される写真はもう少しひいいて全体が分かる写真が良い写真として掲載されている。

左がスノーボード雑誌に掲載されるような写真。どこでどれくらい飛んでいるかよく分かる。右の写真はライダーによりすぎていてどんなところでどれくらい飛んでいるのか全くわからない。報道写真はこんな写真が多い。

その理由は新聞等は文章ですべてを説明して写真はその補足的な扱いだからだと思われます。見た目がどんな人でどんな事やっていたか伝わればいいのです。スノー専門誌では写真ですべてを説明しようとします。文章は写真の補足的な位置づけです。インタビューやトリップ記事など、読ませる記事もありますが、その際も写真は別扱いで、それ単体ですべてを説明することが求められます。

そのために必要なものは何なのでしょう?

1.どんなところか?

どんなところを滑っているかひと目で分かる。

まずは滑っているところをわかりやすく写真に写し込みます。

例えばジャンプならばどこからジャンプしたか?アプローチはどれくらいか?着地はどこかなどをちゃんと写し込みます。

もしかするとこれがもっとも重要で、スノー写真の生死をわけるポイントかも知れません。初めてスノーボード専門誌編集部に写真を売り込みに行った時、一番最初に指摘を受けたポイントでした。ライダーのスタイル、ジャンプの高さはバッチリ、でもジャンプしたところが写し込まれてなくてボツなんてことはよくあります。

2.どんなふうに滑ったか?

2ターン分の雪煙があがっています。かなり雪が軽いのでしょう。目線には同じような斜面がまだ続いています。

どんなところをどんなふうに滑ったのか?どんなふうにジャンプしたのかを1枚で表現します。

例えば、ターンで巻き上がる雪煙がどれくらい大きく舞い上がったかすべて写し込むことでそのターンのスピード、そのライダーのパウダーでのライディングスキルやスタイル、その他の補足情報が説明できます。

高く舞い上がるのは雪が軽るかったからでしょう。ということは前日夜まで雪が降り積もり現在はとても寒い朝なのだなと考えられます。ライダーはそんな環境で普段も滑っていてスキルも高い。もっとも高く雪が舞い上がっている写真ならライダーはターンの終盤近くである。そして、すでに次のターンに向けて準備をしているはずだと考えられます。

ここでは雪煙を例に上げましたが、それ以外でも「どんなふうに滑っているか表現できているかな〜?」と考えながら撮ったり、撮影あとで「一番スタイルでてるのどれかな〜?」なんて考えながら OKカットを選びます。

シークエンスと呼ばれる連続写真でこれらを表現することもありますが、これは別の機会に説明します。

3.どうなるのか?

そして次はどういうアクションをするのか?ということも表現します。

単純にライダーの目線の先を写し込んでもいいです。ターンの雪煙で説明すると、ターンの先には同じような最高の雪が待っている。ライダーの目線は次の方向へ向いている。そんなことを写し込みます。想像性を高めるために重要な部分です。

上記3ポイントに強弱をつけて写真をまとめる。

ランディングはどう考えてもブロック部分。そこに主題を持って画面を構成する。

上記3ポイントのうち、もっとも強調したい部分を主題にして構図を決め、写真を完成させる。

上の写真ではブロック部分にライダーは着地する。高いところから落ちてくるので、それを表現するのはもちろんだが、ブロック上を滑るということが他とは違う見せ場の部分なのでそこに主題を持ってくる。ここでは画面内のもっとも広い部分を使ってブロックを写し込んだ。

超巨大なキッカーをジャンプしてすごい飛距離を飛ぶのであれば、まずどれだけキッカーが巨大かわかるように写真に配置しライダーもスタイルが出ているもっとも高い位置にいるところでシャッターを切ります。「どうなるのか?」の部分はこの際大胆に削除してもいいでしょう。

ちなみに本気のスノーボード専門誌では、たとえランディングシーンが写真に写っていなくても、メイクしなかった場合写真は掲載しませんでした。

全部を平均的に写真に写し込むと、ライダーがど真ん中に写った、俗にいう日の丸構図の写真になる事が多いです。良い写真に仕上げる技術があるなら日の丸構図もアリですが、それはとても難しいです。そのためにも主題はなにかに気をつけながら撮ります。

専門的知識

パウダージブ。スノーボードを深く知っていないと、転けそうになっているように見えるかもしれない。

スノーボードを知っている人が撮っている、と言うことです。

「これかっこいいよね!」なんて話はそのスポーツをよく知っている人同士、かっこいいポイントについての共通認識がないと成り立ちません。これはどんな業界のカメラマンにも必要です。

新聞など報道系の写真でスタイルのピークではない写真が掲載されたり、ひどい時にはグラブ直前の写真が使われることがあります。これはスノーボードの知識がないために起こってしまう悲劇です。

ライダーたちと同じくらいそのスポーツが好きでプレイしていれば自然とこの辺りはクリアできます。

美術的アプローチ -感動を共有できる1カット-

スノーボードの専門誌にグラビアとして掲載される写真は、美術的にもとても完成度が高いです。これはサーフィンやスケートボードの文化と同じなのではないかと推測しています。

今でこそ、これら全ては競技としてオリンピックにまで採用されていますが、もともとは遊びなんです。競技ではないのです。

競技の世界は、「早い」とか「難しいといったことだけが評価されます。スノーボードは遊びの世界なのだからなんだっていいんです。むしろ競技世界のアンチテーゼとして、単純に「かっこいい」とか「きれい」っていうことだけを考えています。

スノーボードの写真は「かっこいい」とか「きれい」っていう感動を美術的なアプローチで表現しようとしています。

光と影

午後のセッションで、若干太陽が傾き、強烈な半逆光が斜面に差し込んでいたのでこの写真を撮ることができた。

究極はこれだけなのではないかと思うときがあります。太陽のあたっている部分とその影。

基本的に雪山は白いところなので強烈な光で陰影を出して表現しなければなりません。晴天の朝や夕方、太陽の光が横から差す時間帯がもっとも光と影の表現に適しています。

逆に曇りの日。フラットライトと呼ばれる光の時はもっともこの表現が難しいです。ストロボを使い、強引に強烈な光を作って撮影したりします。最終的にはPHOTOSHOPの力も借ります。

色味から夕方のラストランだと推測できる。

雪山は真っ白ですが、その白にも種類があります。朝は青みがかっていますし、夕方のマジックアワーは黄色や赤色になります。

ライダーはカラフルなウエアーを着ています。意識の高いライダーなら必ず派手な色のウエアを着ます。派手な色のウエアを着ていないと表紙に採用しない雑誌もありました。

私は一時期ストロボに色フィルターを付けてライダーや景色に色を付けることにハマっていました。

色についてはとても難しく、使い方はカメラマンのセンスによる所が多いです。

構図

もっとも基本的な三分割法で組み立てられた写真。

見ていて安心感のある構図や、なにか心に引っかかる構図を考えて撮ります。

3分割法など、一般の写真で言われる「構図」と同じことが言えます。そして、上記の「詳細な状況説明」との兼ね合いで構図は決まります。これを語り始めると一冊の本になるくらいですので、あらためてスノーボード写真における構図の考察をしてみます。

まとめ -これらは基本です-

上記内容は基本的なことで、これらを知った上で応用的な写真を生み出していきます。

ピカソの抽象画も彼に基本的な技術があったから描けた。それと同じことです。

ボードの先っぽしか見えてないどうしようもない写真だけど雰囲気がよく伝わる。

この写真、セオリー無視で、ライダーすら写ってないけど気持ちよさとかスノーボードのダイナミックな感じは伝わってくる。とてもかっこいい写真だと思います。私は大好きです。

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