シャッタースピードの目安 -スノーボード&スキーのアクション撮影-

シャッタースピードの目安 -スノーボード&スキーのアクション撮影-

撮影現場では瞬時に多くのことを決定しなければならない。悠長にしているとすべてが終わってします。そのためいろいろなことを簡略化して考えるようにしています。

シャッタースピードを3つの段階、ゾーンに分けて考えています。アンセル・アダムスを気取って3ゾーンシステムとでも名付けてみましょうか。

シャッタースピードを簡単に説明

シャッタースピード(以下SS)とはシャッターの開いている時間です。画を写し取る画像素子は開いている間、写っているものをすべて記録します。

1/60というのは1/60秒間シャッターが開いている状態です。5秒間とか30秒間開けることもできますし、バルブ撮影といって自分で時間を測ってシャッターを開けて閉めることもできます。

短いシャッタースピードだと被写体が動いても、一瞬しか写らないのでぶれません。また、手ブレもおこりにくいです。逆に遅いシャッタースピードだと開いている間、被写体の動きが全て写ります。手ブレもおこりやすいです。

ただ、ぶれている写真がすべて失敗かと言うとそうではありません。躍動感やリアル感を出すためにわざとぶらした写真を撮るのはよくあることです。

望遠レンズと広角レンズにおけるSSの考え方の違い

望遠レンズは遠くのものをとらえているので、少しの手ブレが写真に影響します。逆に広角レンズは広い範囲を写すので影響しにくいです。

同じSSでもレンズが違えばブレの影響が違って現れることも頭に入れておきます。今回のお話は70-200mmを念頭においていますが、広角でもほぼ同じか、若干SSを遅めに解釈して応用すれば問題ないです。

これだけおぼえてすべてを表現 -1つの基準と3段階のSS-

止まる画、微妙に動がある画、動いている画の3つがあればSSによる表現はほぼ全て操作できると考えます。

そのための基本のSSひとつと3つのゾーンにSSを分けて考えます。

基本—1/250

EOS-1DX EF70-200 F4 1/250S F6.3

このSSであれば大きな失敗写真にはならないです。ぶれない最低SSとして考えています。手ブレ補正機能がレンズやカメラについていればなお間違いないでしょう。脇をしめ、カメラが固定できていればスノーボードやスキーくらいの速さのスポーツであれば止まります。

また、このSSは1DXやD5のストロボ同調速度の最高値になります。ノンフラッシュでもフラッシュ撮影でもこのSSより早いか遅いかが1つの大きな基準であるとざっくり考えます。

ちなみにフィルム時代、感度を簡単にあげられなかった時代、東京ドームでのボードの大会では1/250で撮っていました。現在はデジカメの性能が上がり等倍で画を確認するので、フィルム時代の感覚は通用しません。おそらく等倍で厳密に見れば多くの写真で被写体がぶれているでしょう。ですのでこのSSで外せない大会の取材などは撮りません。感度を上げて最低でも1/640にはしたいところです。

完全に止める—1/1250以上

EOS-1DX 70-200F4 IS 1/1250S F6.3 ISO125

これくらいのシャッタースピードが稼げる環境であれば、もっとも失敗写真を作らないSSです。すべてが完全に止まります。厳密に言うと高速の流し撮りなどすれば若干ぶれてしまいますのでブレのない基本姿勢で撮影することは重要です。

スノーボードやスキーのライディングやジャンプの速度でしたら完璧に止まります。完璧に止まった写真が撮りたければこれ以上のSSにするために絞り値や感度を調節します。

微妙な躍動感を演出—1/320〜1/1000

EOS-1DX EF16-35 f2.8 1/640S F5.6

ライダーの動きは完璧に止めたいけれども、舞い上がる雪など超高速で動いているものを少し動いてるようにして躍動感を出したい時に使います。特に1/640〜1/1000はもっとも多く使うSSです。F値とISOとの兼ね合いで考えても、とても使いやすいSSです。

私の場合、冬の北海道の晴天時、SS1/800でF値8、ISO100の写真がもっとも多く、晴天時は感覚的にこの設定になっています。レンズの性能もこのF値くらいがもっとも発揮できます。

背景が走る—1/30〜1/160

EOS-1DX EF16-35 f2.8 II 1/60S F22

ライダーの動きに合わせてカメラを動かして背景を流れるように写したり、逆に景色を固定してライダーが流れているように写す時などに使います。

実際には動きを止める撮り方より、ぶれていて完成した写真を撮る方が数倍難しいです。早い被写体であれば早いSS、1/160辺りにします。ゆっくりなら遅めのSS、1/50辺りにします。

背景を流した写真のとり方

レンズの焦点距離、望遠であるか広角であるかを決めます。望遠であれば若干速めのSS、広角であれば遅めのSSになるなと考えます。その上で被写体の動く速度を予想し1/30〜1/160内で任意のSSを設定します。

レンズやカメラに手ぶれ補正機能がついていればONにしておきます。メイン被写体のブレを防ぐためです。

余裕があれば本番前に流し撮りをしてみます。ぶれすぎていると感じたら早めのSSにブレが少ないなと感じたら遅めのSSに。その余裕がなければ早めのSSの方が失敗が少ないです。メイン被写体のブレが最小におさえられるからです。

実際の撮影時での活用方法

簡単です。どんな写真を撮りたいかによって、上記のSSでF値とISOを調整して適正か若干アンダー目にしてシャッターを切ります。もちろん、厳密に数値を計算して撮影することもあります。

しかし、現場ではやらなければいけないこと、考えなければいけないことが他にも多くあります。F値とISOはもちろん、もっとも重要な構図。ライダーや自分の安全といった写真以外のことにも気を配らなければいけません。そしてそれらを瞬間的に判断して写真を撮ります。簡略化して考えられることはなるべく簡略化しようと言うことです。

撮り方カテゴリの最新記事